コミュニティソーシャルワーク実践セミナー報告

「平成29年度コミュニティソーシャルワーク実践セミナー」報告 ~小地域福祉活動への住民参加を促すためのヒントを探る~

平成29年12月18日、沖縄県社協では「コミュニティソーシャルワーク実践セミナー」を開催した。セミナーには市町村社協のコミュニティソーシャルワーカーら53名が参加し、会場となった県総合福祉センターでは熱心に受講する職員の姿が見られた。
沖縄県社協では地域福祉の総合的な推進を図るため、コミュニティソーシャルワークの普及・実践と小地域福祉活動の活性化に向けた支援に力を入れており、このセミナーは「小地域福祉活動への住民参加を促すためのヒントを探る」というテーマのもと、社協職員のコミュニティソーシャルワークの実践力を養うことを目的に開催した。
冒頭に、「小地域福祉活動に関するアンケート調査から見えてきたこと」として、沖縄県社協地域福祉部から基調報告を行った。この中で、県内では見守り・声かけ等の友愛訪問活動の実施率が高い一方で、生活課題発見のための活動や福祉教育の分野の活動の実施率が低くなっている傾向があること等が報告された。また、沖縄県社協が進める「サンクス運動」の推進に向けた取組みについて説明し、「コミュニティソーシャルワークを担う人材の配置の推進」が運動の目指す柱の一つであること等が説明された。
続く、基調講演では、「小地域福祉活動と住民参加~住民主体の地域福祉活動の専門的支援とは~」と題して、県立広島大学 講師の手島洋 氏が講演を行った。
この中で手島氏からは、「『地域の福祉』と『地域福祉』は違う。地域においてサービス等の社会資源が充実することだけでは十分ではなく、地域の暮らす住民の内発性によって自発的で主体的な活動を展開することが『地域福祉』の目指すところである」と強調した。また、「見守り活動においても、対象者本人との人間関係を重視すべき」とし、「同意やコミュニケーションが無い中での見守りは『見張り』になってしまう」と指摘した。
午後には、沖縄県社協が実施する「社会的孤立対策モデル事業」の指定を受ける西原町と南風原町の両社協より事業の成果とこれからの課題について実践発表が行われた。西原町社協では、町内21か所まで広がった「地域相談窓口」の取り組みや社協の実施する様々な事業との連携した支援体制の構築について発表があった。南風原町社協では、コミュニティソーシャルワーカーを増員により相談支援体制の強化が図られたことや住民への福祉教育を大切にして事業を進めていることなどが報告された。
csw29 最後の演習では、グループワークが行われ、事例検討を踏まえた地域アセスメントの視点や住民の主体性をどう引き出していくのかについて意見交換が行われた。
地域アセスメントについては、地域の特徴と福祉課題の関連性に着目し、必要な支援を検討する視点を学んだ。
また、住民の主体性を引き出す工夫については、社協がお願いして「役割」を担ってもらうこともあるが、住民の自発性に基づくものが本当の意味での「住民主体」の活動であり、ワーカーは自発性を高めるための工夫を意識する必要がある点などを確認した。助言者の神里氏からは、「住民主体の小地域福祉活動とするためにワーカーは時には『待つ』ことも大事である」と助言があり、住民のペースに合わせる必要性についても確認した。
参加者からは、「ワーカーを支援するスーパービジョンの必要性を感じた」、「他の市町村の職員と意見交換することができて良かった」といった声が聞かれた。
県社協ではコミュニティソーシャルワークのさらなる普及・促進と実践力向上に向けた職員研修等に取り組んでいく考えである。