社会資源開発を進めるうえでコミュニティソーシャルワーカーが大事にすべき6つの視点

社会資源開発を進めるうえでコミュニティソーシャルワーカーが大事にすべき6つの視点

沖縄県社会福祉協議会では、県内におけるコミュニティソーシャルワーク実践の推進に資するため、平成22年に市町村社協職員、学識経験者らで構成される「沖縄県社協コミュニティソーシャルワーク研究会」を設置し、平成24年からは研究会の中に「スーパーバイザー会議」を設け、各年度ごとに設定したテーマについて研究協議を行ってきました。

平成26年度には3回のスーパーバイザー会議と研修会を通じ「社会資源開発」をテーマに協議を行いました。この度、平成26年度の取組みの成果を総括し、以下のとおり、県内のコミュニティソーシャルワーカーが社会資源開発を進めるうえで大事にすべき6つの視点について提言します。

 

1.アウトリーチによって生活課題を的確に把握し、課題点を整理する視点

社会資源開発は、それ自体を目的化するのではなく、既存のサービスの枠内では対応が難しいニーズに対して、柔軟に対応できるサービスや支援方法を生み出す視点が重要です。そのため、前提としてワーカーには生活課題を的確に把握し、課題点を整理する視点が求められます。この時、制度の狭間にある課題に対してどうアプローチするかが社会資源開発の出発点となります。

また、生活課題の把握と整理を進めるにあたっては、社協の各種相談窓口の担当者とワーカーが同じテーブルについてケース検討会を開催するなどの情報共有・連携体制も重要となります。

一方、地域には、生活上の課題を抱えていても自らSOSを発信できない方や支援の必要性を自覚していない方もいます。ワーカーには必要に応じて支援が必要な方を訪問するなど、その方に寄り添う姿勢が求められます。

 

2.ワーカー自身も社会資源の一つであることを自覚し、積極的にネットワークを広げる視点

社会資源開発を進めるにあたっては、ワーカー自身が地域の中にある社会資源の一つであることを自覚し、他の関係機関や地域住民、民生委員、ボランティア、NPOなどと連携して支援にあたる視点が重要です。そして、自分たちの役割を伝え、相手の役割を理解し、日頃からネットワークの形成に努めるとともに、社会資源同士をつなげる力量が求められます。また、時には学校や企業、NPOなどの福祉分野以外の関係者と連携を図る場面も想定されます。いわゆる「相手の土俵」に上がった時も、ワーカー自身の役割や意見を相手に分かりやすい言葉で伝え、より良いパートナーシップを築くことが求められます。そのためにも、ワーカーは自身の資質の向上を追求し、積極的にネットワークを広げる姿勢や職場内におけるスーパーバイズ機能を強化し、チームで対応する体制づくりを図ることが重要です。

 

3.支援を必要とする方(当事者)を中心に考え、当事者の強みを生かしながら、当事者と地域とのつながりを生み出す視点

社会資源開発にあたっては、支援を必要とする方(当事者)を中心に考え、まずは、当事者本人のもつ「強み」や「課題解決能力」に着目しながら支援策を考えることが重要です。併せて、当事者の家族や友人、近隣住民などとの関係性を把握し、当事者を中心とした支援ネットワークの構築を図ることが求められます。これは、各種のケース検討会や地域ケア会議においても重要な視点となります。ワーカーはこのことを意識し、専門職だけで抱え込まずに、地域を巻き込みながら、当事者と地域のつながりを生み出す視点を持つ必要があります。

また、地域を巻き込んだ当事者支援を進めるにあたっては、地域住民や当事者を説得するのではなく、納得させてそれぞれの自主性を引き出すことを心がけます。

 

4.地域にある既存の社会資源を把握し、その特徴を理解したうえで活用する視点

社会資源開発では、新たなサービスやプログラムを生み出すことの他に、地域にある既存の社会資源をうまく活用する視点も重要となります。ワーカーには地域に元々備わっている「地域の福祉力」を引き出し、効果的に支援につなげる力量が求められます。そのためには、ワーカーは自らの担当地域の地域アセスメントをしっかりと行い、歴史・文化も含めた地域全体の特性や強みについて把握しておく必要があります。

また、今ある社会資源の価値について地域や関係者と共有し、活動に対する支援や後継者の人材育成について協議を行うなど、要支援者、地域、社協にとって相互にメリットのある「WIN-WIN」の関係づくりに努める姿勢が求められます。

 

5.地域に出向くことで「顔の見える関係性」を築く視点

地域をフィールドとするワーカーにとって、地域に「顔の見える関係性」を築くことは、職務を遂行するうえでの重要な要素です。ワーカー自身を知ってもらうことはもちろんですが、時には、ワーカーが「つなぎ役」となって社会資源同士のネットワークを広げることも大切です。例えば、地域の定例会へ参加する場合などに社協以外の機関にも参加を呼びかけ、地域と機関をつなぐことなどが挙げられます。

ワーカーは地域行事等へ参加するなど積極的に地域に出向き、住民と関わる機会を増やすことで信頼関係が育まれます。また、地域の関係者から協力を得ていくためにも「地域を良くしたい」という使命感と熱意をもって職務にあたる姿勢が重要です。

 

6.地域に協力者・理解者の輪を広げる福祉教育の視点

個人の生活課題について地域全体で考え、多くの人の協力を得ながら解決に取り組み、「地域の福祉力」の底上げを図ることがコミュニティソーシャルワークの目指すところです。地域で起きている課題を住民自らが「自分のこと」として捉え、「自分に何ができるのか」を考え、行動に移すことで、住民一人ひとりが地域福祉の担い手となります。このことは社会資源開発にも通じる重要な視点です。
ワーカーはそのことを十分に意識し、福祉教育の実践に取り組むことが求められます。このとき、福祉教育を児童・生徒を対象とした学校教育の一環として捉えるのではなく、地域に暮らす住民全体を対象とし、地域全体が福祉教育の場として捉える視点が大切となります。

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