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TOPIC 沖縄の島々の介護事情

-住民参加によるニーズ解決に向けた波照間島の取り組み-

                          沖縄県立看護大学 大湾明美


 「沖縄県離島・過疎地域支援事業」のモデル島の波照間島は、石垣島から53Km離れ海路で1時間、空路で20分の距離にある。農業を主産業とした人口581人、高齢化率37.9%、要介護認定者37人中、介護保険施設入所者は20人である(2002.7)。介護保険の在宅サービスは、訪問介護等の訪問系サービスのみで、通所サービスや短期入所サービスはない。規制緩和による民間参入は事業の採算上、極めて厳しい状況にある。
 
 そのため、要介護高齢者は家族による介護が困難になると島外の施設サービスを求めて島を離れる。しかし、意識調査の結果、ほとんどの高齢者たちは、「介護が必要になっても生まれ島で人生の最期を迎えたい」と希望していた。「ありたい姿」と「今ある姿」のずれを埋め合わせるために、沖縄県や大学関係者を加え、役場と波照間島の人々と「島民が安心して老後を暮らせる島づくり」をめざし、竹富町高齢者保健福祉計画と整合性のある住民参加の波照間島支援計画が平成12年度に作成された。
 
 平成13年度から、その支援計画に基づき、島の代表者や保健医療福祉関係者及び学校長などの島内在住者を中心に構成されたワーキングメンバーで、優先すべき事業の実施に向け、具体的検討を重ねた。同時に、ワーキンググループ発行の広報誌「ぱいぬ島通信」を月1回以上発行し全戸配布され会議の内容などは全島民に情報開示した。

 島の高齢者全員に希望調査した結果、今すぐ利用したいサービスは、「生きがいデイサービス」「移送サービス」「配食サービス」「入浴サービス」の順であった。サービス実施に向けワーキング会議で、月に1~2回討議が重ねられ、必要に応じて高齢者のニーズ調査を繰り返した。平成14年9月末現在、生きがいデイサービス、移送サービスが誕生し、配食サービスが年度内に開始する準備を整え、介護保険サービス事業開始に向けNPO法人組織の具体的取り組みがワーキングメンバーを中心に行われている。

 生きがいデイサービスは介護予防の一つで、県内外ほとんどの自治体が実施している事業であるが、波照間島の事業にはいくつかの特徴がある。まず、①サービスの種類、その必要度、利用希望等は、数回のニーズ調査の結果に基づいていること、②役場が、法人格の団体ではなく任意団体に事業を委託していること、③生きがいデイサービス開始2ヶ月でサービス周知度が全高齢者の93%以上であること、④生きがいデイサービス利用登録者が4ヶ月で全高齢者の半数以上であること、⑤サービス内容が利用者の希望メニューで利用できること、⑥島の伝統文化や食文化の掘り起こしを行っていること等である。また、移送サービスの特徴は、ワーキング仲間がインターネットで助成事業を見つけ、役場の協力のもと申請し車を寄贈され、ボランティア事業として、島の高齢者の足を担っている。さらに、配食サービスの特徴は、島のボランティアと食生活改善普及員グループが、町施設の保健センターの厨房を活用し近く役場の委託によるサービスが誕生する予定である。

 社会福祉の基礎構造改革では、利用者のニーズによる自由な選択による柔軟なサービス提供のしくみが求められている。島々の小さなニーズを都会のものさしで図ることなく、島民の目線で耳を傾け、生活している人々と行政が協調することにより新たな地域福祉の鼓動が始まっているように思われる。この住民参加による新たな地域づくりの手法は、他の多くの島々にも適応可能と考える.

     


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福祉情報おきなわVol.86(2002.10.21)
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