人材研修センターだより
~県内社会福祉施設等の「研修」に関する調査より~
近年の社会福祉をめぐる動向はめまぐるしく変化し、福祉ニーズは今後も増大しさらに多様化・専門化することが予想されます。しかし福祉・介護サービス分野では高い離職率と相まって常態的に求人募集が行われ、一部の地域や事業所では人手不足が生じている現状です。このような中で、住民の福祉ニーズに的確に対応できる人材を安定的に確保・育成することが急務の課題となっています。
このことから、沖縄県福祉人材研修センターでは、県内の社会福祉施設等における職員等の研修形態等を把握することにより、これからの福祉人材の育成のあり方について、社会福祉研修の方向性や課題を整理し、今後の取り組み、方策を考えるうえでの材料とすることを目的に現況調査を実施しました。今回は、その中から各組織での人材育成のポイントとなる「職場研修」の現状についてお伝えします。
1.職場研修とは?
まず初めに、「職場研修」とは何を指すのかをここで確認しておきたいと思います。
全国社会福祉協議会発行の『福祉の「職場研修」マニュアル』によると職場研修とは、
①個々の職場(施設や事業所)が、主導的に推進する職員研修の全体を指す。
②「計画―実施―評価」の研修管理サイクルに沿って推進する。
③OJT、OFF‐JT、SDSの3つの形態で実施する。
ものであるとされています。
*
OJT
(職務を通じての研修)とは職場の上司(先輩)が、職務を通じて、
または職務と関連させながら、部下(後輩)を指導・育成する研修
*
OFF‐JT
(職務を離れての研修)とは職務命令により、一定期間日常
職務を離れて行う研修。職場内の集合研修と職場外研修への派遣の
2つがある。
*
SDS
(自己啓発援助制度)とは職員の職場内外での自主的な自己啓発
活動を職場として認知し、経済的・時間的な援助や施設の提供などを行うもの。
2.県内の職場研修の現状
ここから、現況調査の結果をもとに県内福祉施設における職場研修の現状についてみていきたいと思います。
(1)研修担当職員の配置 ~約6割の施設で配置~
ここでいう研修担当者とは、研修計画の策定や職場内研修等の企画・運営等の業務が職務分掌に
位置づけられた職員を指しています。約6割の施設が「研修担当者」を配置していると回答しています。
(グラフ1)問3:貴施設において研修担当者がいますか?
回答:いる-64% いない-33% その他-2%
研修担当者の主な役職については、課長・係長等の「中間管理職」が最も多く、次いで直接処遇職
員(介護員、支援員、相談員等)となっており一人の担当者のみ配置している施設と研修委員会など複
数の担当者を置いている施設の割合がほぼ半数となっています。
その一方で「研修担当者を配置していない」施設の主な理由としては、「担当は決めず必要に応じて
管理職や職員と決めているから」等が最も多く、その他「必要だと思うが組織的な取組みがなされてい
ない」等といった必要性は感じているものの現実的に業務分担等から担当者の配置が困難であるとの
意見もみられました。
(2)職場研修は上手く機能しているか? ~「機能している」は約4割~
次に、各施設で「職場研修がうまく機能しているか」の質問では、約4割が「機能している」、一方で約
3割が「うまく機能していない」と回答しています。
(グラフ2)問9:貴施設において職場研修は上手く機能していると思いますか。
回答:機能している-42% 機能していない-33% その他-19%
ここでは、研修担当者を「配置している」施設の方が「うまく機能している」割合が高い結果となりまし
た。その他「定期的に職場研修は開催しているが、うまく機能しているとまではいえない」や「研修実施
後、それが業務にどう活かされているのかわからない」等の意見があり、職場研修を実施している施設
においても様々な課題を抱えていることがみえてきました。
特に、この研修効果の測定については、研修内容によって知識や技術の習得など効果が見えやすい
ものと、態度や価値観・モチベーションの向上度など客観的な評価が難しく長期的な取組みが必要なも
のとがあり、研修を実施する際の目的を明確にしておくことが重要であるといえます。各施設において
今抱えている課題や人材育成に向けてどのような職員像を求めているのかによっても職場研修への取
組みは変わってくるといえます。
その他にも「職場研修を進める上でネックになっていること」の質問では「研修実施のノウハウがない
」「教材・テキストがない」「講師がいない」等の物理的な課題の他に「業務に追われ時間的な余裕がな
い」「シフト制のため全職員の参加が困難」「予算がない」等といった、県内の福祉施設の人員や予算
面における厳しい現状が浮き彫りとなりました。
(3)職場研修のノウハウを学ぶ研修会の実施を
ここまでで、県内施設では職場研修の必要性は感じている一方、その実施段階では様々な課題が
あることが分かりました。「研修担当者を対象とした研修会は必要だと思いますか」との質問に対しては
約8割の施設が「必要」であると回答しています。
(グラフ3)問11:職場研修のノウハウやテキスト等を提供する研修担当者を対象とした
研修会は必要だと思いますか
回答:必要-80% 必要としない-4% その他-7%
本会福祉人材研修センターでは平成8年度より職場研修担当者を対象に研修会を毎年実施しており
、今年度も去った9月に2日間の日程で開催しました。
この研修では、職場研修の意義や効果的な進め方等の講義をもとに、実際の研修計画の策定や自
職場の研修実態診断などの演習を通じて研修担当者が具体的なノウハウを習得することを目指してい
ます。今回の研修参加者からも「職場研修の必要性を再認識した」「この研修で得たノウハウを職場に
持ち帰り実践してみたい」等といった前向きな意見が出され、具体的な研修ノウハウの習得のみならず
、普段の自分の姿を改めて振り返り、仕事に対するモチベーションの向上にもつながったという声も聞
かれました。本会では、次年度も当研修を予定しており、参加者の方々のご意見も参考にしながら企画
・実施を図りたいと考えております。
(4)おわりに
福祉人材の確保と育成をはかることにより利用者へのサービスの質の向上が求められるなかで、今
後もますます「研修」の重要性が高まることが予想されます。
各施設で職場研修を実施するうえではその成果も一朝一夕にみえるものではなく、継続的で地道な
努力が必要不可欠となります。この取組みを推進していくために、本会では次年度研修の中で職場研
修への取組みの好事例を発表する場を設け、参加者全体での具体的なノウハウを共有することを予
定しています。併せて実態調査の実施等から課題の把握に努め、県内施設の職場研修の充実に向け
てこれからも取組んでいきたいと考えています
☆グラフについては、無回答を除いているため合計が100%になりません。
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福祉情報おきなわVol.122(2008.11.1)
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