県民児協広報情報誌-第23号-
ふくらしゃ

~暮らしに福をもたらす人~


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福祉情報おきなわVol.122(2008.11.1)
編集発行 沖縄県社会福祉協議会  沖縄県福祉人材研修センター
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「孤独死」という新しい課題に向かって

今号では、大きな社会問題の一つとなっている一人暮らし高齢者の孤独死について取り上げたい。


 近年の急速な都市化の波は、便利さや快適さをもたらす一方、地域社会との連帯感の欠如に伴う「社会的な孤立」を生み出し、結果としてだれにも見取られることなく、ひっそりと家の中で亡くなり、時には何週間も過ぎてから遺体となって発見されるニュースが後を絶たない。また、最近では中高年男性の孤独死が増加していると言われている。

 「孤独死防止の手引」(財団法人厚生労働問題研究会発刊)によれば、自らの意思で孤高を貫き、孤独のように亡くなる方もいる。そのような方は、周囲の支援を拒んでいるように見えても、周囲が適切に働きかければ、孤立をしないで済む場合もあるとし、社会や家庭内での役割の喪失、配偶者や友人などとの死別が引き金になって、うつ病を発症することも少なくないと指摘している。

 我々の目の行き届かないところで起きるこのような痛ましい「孤独死」に直面する度に、民生委員・児童委員の役割や社会的な期待の大きさを改めて再認識させられる。


 このような中、先日(9月10日)、沖縄市において「ひとりぼっちにならないで~あんしん沖縄市!」と題して、一人暮らし高齢者の孤独死をテーマとするシンポジウム(市在宅介護支援センター主催)が開催されたので、その内容を報告したい。

 沖縄市は、数年前より一人暮らし高齢者等の孤独死が発生していた。同市では、平成14年と平成19年に「孤独死」防止を目的とした一人暮らし高齢者の生活実態調査を実施し、これらの調査結果をもとに行政、在宅介護支援センター、市社会福祉協議会、市民生委員・児童委員協議会、自治会などが連携した一人暮らし高齢者の死亡事故防止ネットワークが構築されている。今回のシンポジウムは、同市における「孤独死」防止の取り組みについて、幅広く県民、市民に周知し、孤立死防止の意識の高揚を図るとともに、「孤独死」対策への啓発を目的としていた。

まとめとして
今回の報告の中でスーパーの店員、八百屋のおばちゃん、新聞配達といった毎日要支援者と接する機会の多い地域の方との連携で日々の生活に密着した見守り活動が行われていることは、地域住民が地域福祉における「協力者」の立場ではなく、地域社会を構成する一員として責任を分担し関係機関相互とに協力し、地域社会の様々な課題に取り組む主体となり活動しているといえるのではないか。まさにこれからの地域福祉のあり方だと思われる。

「孤独死」防止のシンポジウムの開催

各関係機関等の取り組み

 行政からの基調報告の後、市社協、在宅介護支援センター、自治会長、民生委員、高齢者代表5人のシンポジストのそれぞれの立場から報告があった。

 市社協の大城健一さんからは、自治会を中心とした住民参加型の「小地域ネットワーク事業について、それと関連して市第二民児協の桑江春子さんから「民生委員・児童委員の活動を通して」について報告があった。両者の報告によると、平成13年市社協より小地域ネットワーク事業の指定を受け、自治会を中心に民生委員・児童委員、老人クラブ会員の中からボランティアを募り小地域ネットワーク「明友会」を発足させ、友愛訪問を続けてきた。この活動から、高齢者の「生きディ」への参加希望の多さと「まるけーてぃなー みんなでゆんたくしたい」との想いに共鳴し、一人暮らし高齢者にも参加を促し「ゆんたく会」を立ち上げ、地域住民と連携した見守活動を行っている。」とのこと。

 続いて、中の町自治会長の伊禮幸子さんから、外国人居住者の多い特徴にふれながら、外国人の一人暮らし高齢者との関わりや「一人暮らし高齢者SOS対策モデル事業」等を通して、地域の高齢者の孤独感の解消、事故の未然防止の取り組みについて報告があった。また、市在宅介護支援センター緑寿苑介護福祉士山城より子さんからは、地域の高齢者が利用するスーパーや八百屋、新聞配達員の協力を得ながら、一人暮らしの高齢者の見守り・安否確認の活動が報告された。地域の元気高齢者代表の伊波孝仁さんからは、「付合い上手は長生きの秘訣」と題して、高齢者自身が老人クラブのサークル活動に参加することにより、生きがいを見つけることが、地域から孤独にならない秘訣であることを熱っぽく語られた。

浮かび上がった今後の課題

 シンポジウムのまとめでは、「小地域ネットワーク事業におけるマンパワーの低下により見守り活動に限界が来ている」、「自治会に加入していない人の情報がつかめない」、「民生委員・児童委員に援助してくれる協力員育てたい」、」地域に住む日本語が話せない外国人との意思疎通の問題」等多くの課題が指摘され、地域の関係機関のみならず、隣近所やスーパー等地域の(人的)社会資源を網羅した有効なネットワークの構築が求められているとした。

各単位民児協における積極的な活動展開に向けて

 発表の中に協力者として必ず民生委員・児童委員の名が出てくるが、自治会、老人クラブなど地域の団体と連携しながら地域住民のための活動を推進している信頼のおける住民という存在であることを裏付けるものである。また、民生委員・児童委員がネットワークに入り、困っている人を支援することは、地域の住民に大きな安心感を与えることにも繋がっている。

 このような活動やネットワークつくりが、住民同士で支え合い、互いの努力で誰かが困っていれば、地域の誰かが、その課題をともに考え、ともに解決方法を探っていく姿勢が必要である、また、課題に対する共通の認識をつくることも重要である。このような意味でも、民生委員・児童委員は地域住民であるという強みを生かして、常に住民に身近な頼りになる存在であることが望まれる。

 他市町村民児協においても、行政、関係機関との連携・協力のもと、これまで行ってきた取り組みを再点検し、一層の強化や新たな工夫により「孤独死ゼロ」をめざした実践を推進していきたいものである。