民家を活用した 憩いとふれあいの活動拠点
かまどぅハウス・もみじ会(恩納村真栄田)

 
 恩納村真栄田地区は、南北に長い恩納村の南部に位置し、同村を縦断する国道58号線の西側に広がる集落である。本島西海岸に面する同地区は、自作農や漁業を営む世帯も多く、地域共同体のつながりを残す地域でもある。
 その真栄田地区で、民家を活用した「かまどぅハウス」で地元のボランティアグループが高齢者を招いてくつろいでもらう活動が注目を集めている。



民家だからリラックスできる空間

▲みんなで囲む食卓には手作り料理が並ぶ。会話も自然と弾む
▲みんなで囲む食卓には手作り料理が並ぶ。会話も自然と弾む
 「かまどぅハウス」とは、恩納村真栄田地区で実施されている憩いの場の名称である。真栄田地区および近隣の地域の高齢者を対象に、日中を楽しく過ごしてもらうための活動を行っている。
 かまどぅハウスは真栄田地区の民家を活用して実施されている。よって、住宅地の中にあるため、利用者の多くは徒歩で通うことができる。活動の時間帯は毎週火曜日の10時ごろから3時ごろまで。この中で、一緒に昼食をとったり、おしゃべりしたり、ビデオを鑑賞したりとゆったりとした時間を過ごしている。
 昼食では、利用者が持ち寄ってきた野菜や魚介類が調理され食卓に並ぶ。これら食材の多くは利用者の自宅や海で採ってきた野菜や魚介類である。公民館などで実施されるミニデイサービスなどと違い、民家で実施されるかまどぅハウスでは、居間で食卓を囲むため、家庭的な雰囲気の中でリラックスして過ごすことができる。
 かまどぅハウスを運営するのは、ボランティアグループ「もみじ会」(伊波絹江会長)のメンバーの方々。活動はもみじ会の熱意によって支えられている。食材の買出しから昼食の調理、利用者との歓談や後片付けまでを手分けしながら行っている。
 包丁がまな板を叩く音やテレビから流れる琉球民謡に利用者の笑い声、かまどぅハウスではまさに日常生活の一部を切り取ったような和やかな時間が過ぎていく。
 活動にかかる費用は、利用者からは食事代の200円のみをいただき、活動にかかる残りの費用は会の持ち出しやバザーの収益をあててまかなっている。


「何かできることは」から『もみじ会』が発足
 
  もみじ会の結成はおよそ7年前(平成11年)のこと。当時、ホームヘルパーの養成講座を修了した有志が「このまま解散するのはもったいない。何かボランティアできることはないか」との想いから会が発足した。もみじ会には現在、10名のメンバーが在籍している。
 会結成以前から地域の子育て支援などを行うなど、地域の福祉活動に関心の高かったメンバーの面々は、恩納村内でさまざまなボランティア活動を展開してきた。
 かまどぅハウスはこうした活動の一環としてスタートした。もみじ会のメンバーの安富祖愛子さんが、義母である さえさんが入院療養に入ったため、その自宅を提供。「地域のお年寄りが、家に閉じこもるより、ここで楽しく過ごしてもらえるなら」と平成17年1月に開所の運びとなった。ちなみに、「かまどぅ」というのは、さえさんの幼名から取って名づけられたものである。
  
 

誰もが足を運べる地域の「縁がわ」
 
 コンクリート建て平屋のかまどぅハウスの近くを通ると利用者とボランティアの楽しい歓談の声が漏れ聞こえてくる。かまどぅハウスでは地域の憩いの場として常に来客を歓迎しており、そのため地域住民もよく足を運ぶ。
 メンバーの安富祖さんは、「色んな方々が来客で見えられます。こうして色々な方々とふれあうことは、利用者の皆さんにとって、良いことなんですよ。」と話す。
 取材に訪れた日も利用者家族や地域の駐在所の警察官、地域包括支援センターの職員などが顔を見せた。
 利用者と一緒に卓を囲み、「道路の横断は気をつけてくださいね」、「最近、体調はいかがですか?」と利用者に声をかける。
 こうしたお茶を飲みながらふれあえる「地域の縁がわ」のような空間が、そこで暮らす住民にとって憩いの場となるだけでなく、同じ地域で暮らす一員としての自覚と安心感につながっているようだ。


活動者の声

▲ かまどぅハウスには地域の方々もよく足を運び、利用者との談笑に花を咲かせる
▲ かまどぅハウスには地域の方々もよく足を運び、利用者との談笑に花を咲かせる
  かまどぅハウスを利用している長浜長栄さん(90歳)は、「ここに来るのが毎週楽しみ。」と話す。ボランティアが調理した昼食に「おいしい」と舌鼓を打ち、おしゃべりを楽しむ。ビデオ鑑賞がお好きで、自宅から持参した闘牛や琉球芝居のビデオをみんなと観るのが楽しみだという。
 利用者家族からも「日中の面倒を見てもらってとても助かっている」と喜ばれているとのこと。
 もみじ会の伊波会長は「みんなの笑顔をみるとうれしい。」と話し、メンバーの山内鈴子さんは「地域でお年寄りを元気にしていきたい。介護や医療が必要にならないように元気でいることが大切」と語った。
 もみじ会では「お年寄りがここに来たいという限り、活動は続けていきたい」という。利用者が元気でいることが、ボランティアのやりがいにもつながり、こうした高齢者の生きがいづくり活動の原動力になっている。



高齢者と社会との接点を~憩いの場のさらなる広がりに期待
 
 かまどぅハウスには真栄田地区以外の近隣の字(地区)からの利用者も訪れる。高齢者が地域社会との接点を持つことは非常に重要であり、行政等のさらなる支援が求められる。恩納村では介護保険(介護予防)の通所介護事業所があるほか、生きがい対応型のミニデイサービス事業も各字の公民館などで毎月1回実施されている。
 一方で、制度やプログラムに拘束されない、かまどぅハウスのような住民が作り上げる憩いの場や拠点はとても貴重な存在であり、今後こうした活動がますます広がることが期待される。 


地域に密着したスタイル 他地域でも参考に
 
 近年、地域福祉への関心の高まりを背景に、高齢者の居場所づくりに向けた活動が注目を集めている。 かまどぅハウスの開所以来、その取り組みについて県内外から視察や取材の依頼が続々と寄せられているという。
民家活用や地域密着のスタイルは他の地域でも大いに参考になる事例である。


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