シリーズ活動最前線

高齢者の身体拘束廃止に向けて ~北中城若松病院~

 「あなたは将来痴呆になったら縛られたいですか?」誰もが高齢者になっても安心して暮らしたいと願うなか、この簡単な質問の答えを見つけだそうと、身体拘束廃止に向けて努力している病院がある。北中城村若松病院。もちろん質問の答えは「NO」。しかし、痴呆による徘徊等により何らかの形で身体的な拘束を受けている高齢者は少なくない。もちろん、最前線の介護・看護職員にとって、身体拘束は日常のケアのうえで安全上の理由からやむを得ず行っていることで、望んで行っていることではない。しかし、本来「高齢者の看護やケア」と「身体拘束」は相容れないもの。北中城若松病院では、この疑問をきっかけに身体拘束廃止に向けて取り組みが始まった。


職員の葛藤
 北中城若松病院では1997年10月頃から、日常の介護から身体拘束を廃止したいと職員の間で、検討を繰り返してきた。「拘束をやめたために転倒事故が起きたらどうするのか?」、「責任は誰が取るのか?」、「そもそも介護職員が不足なのではないか」さまざまな意見や戸惑いが交錯しながらも、1999年5月、北中城若松病院では『抑制ゼロを目指す努力宣言』を行い「抑制廃止マニュアル」を作成、病院内や関係施設での身体拘束の廃止に向けて取り組みを開始したのである。
 そもそも身体拘束(抑制)とは何であるのか。「院内抑制廃止マニュアル」では、本人の意思に反してその行動の自由を奪うことと定義している。また、その人に直接作用する物理的手段によって抑制する身体拘束の外にも、禁止言葉や強い口調で心身の動きを抑制することや、過剰な投薬により心身の自由を抑制することも含まれる。


廃止に向けての取り組み
 具体的な活動としてまず、物理的な身体拘束をやめることから取り組んでいる。廃止の第一段階として、①車椅子上での身体の固定、②ミトン(手袋)の使用、③つなぎ服の使用、④ベッド上での身体の固定の4つを設定し、これらの拘束廃止に向けて努力している。
 病院院長の積極的な協力もあり、この取り組みへ向けて椅子やソファーの購入、センサーや低床ベッド、畳間の活用も行っている。しかし、最大の難問はやはり職員の意識改革。病院では、事故の際の院長責任の明確化や、これまで「始末書」のような存在であった事故報告書も、職員の意識を変えることで取り組みへの参考資料として活用することになっている。また、業務内容も、痴呆症等で落ち着かない方の為の「見守り部屋」をおくことで、「見守り」を業務化し、「ひやりはっとノート」をつけ、職員間での事故の危険性の情報を共有すること等にも取り組んでいる。


相談窓口の活用を
 平成14年度からは、沖縄県身体拘束廃止推進事業の一環として「身体拘束廃止相談窓口」を委託され電話やFAXによる相談を受けている。施設や実際の介護・看護の現場において、身体拘束を廃止していくための工夫などについて具体的な助言を施設職員や家族に提供している。相談の多くは施設職員からで、身体拘束廃止に取り組む施設のサポート役になっている。「実際、北中城若松病院でも、取り組みを始めて以来、7割から8割の患者・入所者の身体拘束は比較的容易にはずすことができた。安全のためとの理由から抑制することは、職員がケアを放棄したことも同然なんです」と身体拘束廃止の重要性について介護教育主任の金城誠さんは語った。
 拘束されてまで、高齢者は本当に自身の介護を望んでいるのであろうか。身体拘束を廃止していくためには、その方の望まれるケアとは何だろうかと常に意識していくことが求められる。北中城若松病院では、今も「疑問の追求」と「限りない工夫」を行い続けている。


 北中城若松病院 
  北中城村字大城311
  TEL:935-2277
  ホームページ:http://www.ii-okinawa.ne.jp/people/agape/

 沖縄県身体拘束廃止相談窓口(若松病院内)
  電話相談  982-0151 (毎週木曜午前9時半から午後4時半まで)
  ファクス相談 982-0152(随時受付)




福祉施設経営相談Q&A

Q.割増賃金を計算するうえで、注意しなければならないことがありますか。

A.社会福祉法人の給与は、公務員準拠と言っても、労働基準法が全面適用されます。
したがって、公務員が使う、給与法は適用しません。割増賃金についても当然、労働基準法の適用となります。
参考として、給与法の割増賃金の算式を記します。
(俸給の月額+調整手当の月額及び研究員調整手当)×12/(52週×40時間)・・(一般職の職員の給与に関する法律第19条)

 上記の算式からもわかるように、公務員には多種多様に存在する各手当が、算定の基礎から除外されています。
一方、労働基準法では、割増賃金の算定の基礎には、基本的に一定の手当が含まれます。
逆に、算定の基礎から除外できる手当も限定列挙(則第21条)されています。
 ・家族手当
 ・通勤手当
 ・別居手当
 ・子女教育手当
 ・臨時に支払われた賃金
 ・一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
 ・住宅手当

 給与法において、分母を52週×40時間とすることは労働基準法上も問題ないと判断していますが、問題があるのは、計算式の分子です。給与法に従うと割増賃金が、労働基準法で計算した割増賃金を下回ることになります。
 結果、労働基準法違反として、是正勧告と共に、割増賃金の再計算と、差額支給の命令が出ます。
 今、割増賃金の問題が全国的にクローズアップされています。したがって、今一度、就業規則の給与規定が、給与法ではなく、労働基準法の割増賃金の計算式になっているかどうか、再点検をしてみてください。
                                        (専門相談員江尻育弘)




支援費制度マメ知識③ ~ 介護保険制度と支援費制度は両方利用できるの? ~

原則として介護保険が優先して適用されますので、介護保険の対象となる方は、先に介護保険制度を利用していただくことになります。ただし、次のような場合は例外的に支援費制度が適用されます。

1.介護保険にサービスがない場合(視覚障害者ガイドヘルプなど)

2.サービスはあるが、障害者の固有ニーズに合わせたサービス内容の場合(障害者向けデイサービスなど)

3.介護保険のサービスを使い切ってもなお障害特性上供給量が不足する場合(全身性障害者に対する上乗せサービスなど)



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福祉情報おきなわVol.92(2003.11.1)
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