シリーズ活動最前線

   乳児院「吉水寮」~社会福祉法人袋中園~

 沖縄県の南部。のどかなサトウキビ畑がひろがる糸満市に沖縄県内で唯一の乳児院「吉水寮」がある。乳児院とは、保護者のいない乳児や、保護者に養育させることが望ましくない乳児(おおむね2歳未満まで)を、児童相談所の措置により入所させて、養育することを目的とした児童福祉法に基づく児童福祉施設である。
 吉水寮は昭和52年4月、社会福祉法人袋中園によって設立され、今年で設立26周年になる。社会福祉法人袋中園は昭和51年6月設立が認可された、宗教法人浄土宗が設立の母体となっており、現在、乳児院「吉水寮」、児童養護施設「青雲寮」、知的障害児施設「そよかぜ寮」、知的障害者更生施設「おおぞら寮」の4施設を設置運営している。

吉水寮の子供たち
 吉水寮では現在21名の乳児・幼児が生活している(平成15年8月1日現在:定員20名)。「心身の健全な発育と豊かな人格を育てる」という養育理念のもと、11名の保育士と4名の看護師が乳幼児の養育を担っている。寮内はたいへん明るく、子供達の声で活気づいている。周囲に他の福祉施設が併設されているため、子供達の元気な声が絶え間なく入ってくる。
 乳児院へ入所する理由はさまざま。父母の家出や死亡、虐待、若年出産などの、父母の事情が複雑に絡み合い、子供たちは吉水寮へと保護される。なかでも特徴としてみられることに、精神障害による父母の育児能力の欠如があげられ、沖縄県の一つの特徴ともいえる。特に最近の傾向としては2年ほど前から入所する乳児が増加する傾向がみられ、また、入所した後に家庭復帰できる乳児も少ない。児童養護施設への入所や里親へと引き取られていくケースが多いのも乳児院の実状の一つである。

地域社会との関わり
 吉水寮には設立当初からボランティアグループが関わっている。グループ名は「虹の会」。地域の主婦が中心となって、吉水寮のサポートを続けている。個人のボランティアや実習生も積極的に受け入れており、子供達は多くの多くの大人と関わることができる。施設長の山本牧生氏は、「乳児院だからといって決して閉鎖的にはならないようにしている。地域の人々が多く関わることが乳幼児の成長の大きな栄養素になる。」と地域社会との関わりの意義を話す。
 社会福祉法人袋中園は独自で乳幼児、児童の短期保護事業を実施している。保護者が、病気や出産、冠婚葬祭などの理由により、一時的に家庭において養育が困難になった子供を施設内で預かることもでき、地域の子育て支援にも貢献している。

乳児の人権~「吉水寮」からのメッセージ~
 乳児院は数ある福祉施設のなかでも、とりわけ子供の人権を守る必要があるところといえる。山本牧生施設長は「乳児は自分の命を自分で守ることができない。私たちは乳児の全人格を守り育てる仕事をしている。だから片時も乳児から目が離せない」と語る。また、「乳幼児期は、両親との愛着関係の形成が欠かせない。吉水寮では乳幼児が安心感を持てる関係づくりを大切にしている」と愛着関係の重要性についても語った。
 時代を問わず、子供ひとりひとりは両親の愛情を受けながら大切にされる権利を持っている。その権利を守るためには、我々大人が、子供から信頼される大人として、信頼できる社会環境を創っていく必要がある。特に乳幼児の子供にとっては・・。

    乳児院「吉水寮」 TEL(098)994-5134


福祉施設経営相談Q&A
Q職員が、自家用車を公用に使い、事故によりけがをしたとすると、労災の適用はどのようになるのでしょうか。また、自動車事故を起こした場合、法人の責任は問われるのでしょうか?


A. 業務中の運転事故なので、業務上災害と認められます。従って労災が適用されます。
 次に自動車事故が発生した場合の使用者の責任ですが、次の2点が考えられます。
① 使用者責任
 運転手本人に損害賠償義務が生じますが、運転手が、ある者に雇われていて、その運転行為が業務に関連している場合はその使用者にも損害賠償義務が生じます。
② 運行供用者責任
 事故をおこした車両の所有者、あるいはその車両の運行を支配・管理する権限のある者(運行供用者)は事故により人が死んだりけがをしたなど、人身事故が発生した場合に損害の賠償責任を負うことになります。
 ご質問のケースでは業務上と判断されるために、職員の身体については労災適用ですが、法人には、①について損害賠償義務が生じますし、人身事故の場合は②が問題となりそうです。
 また、業務上でなくても公用車を使用中での人身事故であれば、運行供用者責任が認められるケースが多いのではないかと思われます。なお、使用者責任は、自動車事故に限らず職員の業務に関連する不法行為に適用されます。したがって、就業規則において、道路交通法違反(飲酒運転や運転中の携帯電話の使用)に対する条文を、服務規定や懲戒規定の中に、盛り込むことは、職員に対する行為の抑止力になりますし、実際に起きてしまった時の組織のリスクマネジメントとして、重要です。



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福祉情報おきなわVol.91(2003.9.1)
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