TOPICS 沖縄の島々の介護事情

28島の介護サービス実態
沖縄県立看護大学 大湾明美


 沖縄県には架橋で陸路が確保されている島や無人島を除くと28ヶ所の有人離島があり、沖縄県人口の約1割の人々が暮らしている。ひとことで「離島」といっても、総人口6人の新城島から4万人を越える石垣島まで様々である。「離島には高齢者が多く、単身世帯や高齢世帯が多い」という印象は必ずしも確かでなく、北大東島、南大東島、石垣島等、人口構成が都市型の島もある。人口だけでなく地理的、民俗学的影響を受け風習や文化、価値観の異なる島々には特性があり、介護事情も個別的な対応が求められている。
 法治国家であるわが国において、社会保障構造改革が始まり、介護保険法はその第一歩として位置づけられた。「利用者本位」、「自己決定」、「自立支援」などを理念とし、長寿が喜べる社会をめざし福祉社会の具現化の先導役となっている。当然のことながら離島においても、いつでも、どこでも、だれでも自らの意思でサービスが利用できる福祉社会の実現を可能にしなければならない。

ところで、離島の介護保険サービスの実施状況は、施設サービスでは、島内に特別養護老人ホーム等の介護施設を有する島は9島で、19島の高齢者は施設サービスが必要になると島外にでる。一度島を離れると、二度と生まれ島に帰ることができず、終の住処を覚悟しなければならない。在宅サービスについては、人口規模の大きい島では民間の競争原理が導入されているが、人口1,000人未満の小さな島々では、高齢化率や要介護者の割合は高いが、事業の採算性の問題などから民間参入は困難な状況である。島内で実施されている在宅サービスの実態としては、ホームヘルプサービスなどの訪問系サービスはほとんどの島々で整備されていた。しかし、デイサービスやショートステイ等の通所系、短期入所系サービスは、特別養護老人ホーム等、介護施設のない島では、整備が遅れている。島内に在宅サービスが全くない島が2島あった。ケアマネジメントにおいては、島内にケアマネージャーが存在しないことにより、島外にケアマネジメントを依頼している島(18島)が多かった。以上のように、離島の介護保険サービスの現状は、介護保険制度の理念には程遠く、介護サービスが十分に選択できる状況にない。
このような現状を打破し、介護が必要になっても安心して暮らせる島づくりをめざして、沖縄県は介護保険法施行と同時に「沖縄県離島過疎・地域支援事業」を新規に立ち上げ、沖縄県立看護大学と共同で支援を開始した。その実現のためには、島々の特性を活用した創意工夫が必要であり、島に暮らす人々が主体的に問題解決に取り組む福祉文化をつくることである。有人離島の介護の実態を明らかにしつつ、波照間島をモデル島とし、その具体的な取り組みが進められている。この試みは、島の人々のつながりの広さと深さ(ソーシャルネットワークの高さ)を活用した相互扶助の再生を意図している。この実現こそ、わが国のめざす「安心した豊かな自立社会」のモデルとなることを期待している。



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福祉情報おきなわVol.85(2002.8.19)
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