特集 社協における権利擁護システムに関する調査研究事業
最終報告書について
本会では、法律・福祉などの職能団体の皆様の協力を得て、社協における権利擁護システムに関する調査研究事業を実施しました。このたび、最終報告書がまとまりましたので、報告します。
本調査研究事業は、判断能力が不十分な方が、安心して地域生活を送れるように支援する仕組みの一つである「権利擁護システム」について、今後社会福祉協議会としてどのような取り組みが必要なのかを総合的に検討を加えるため実施しました。
平成11年より社会福祉協議会では、判断能力が不十分な方の日常的な金銭管理等の支援を行う地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)を実施しています。今回の調査研究事業では、この地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)が地域で判断能力の不十分な方々を支える仕組みとして十分な実施体制が図れていないことが明らかになっています。
また、社会福祉基礎構造改革後、高齢者や障害者などの福祉サービスの利用形態が、措置から契約制度に変わりましたが、自身で福祉サービスの利用契約をする能力がない方や福祉サービスの利用にあたり必要な助言等の支援が必要な方を支える権利擁護の仕組みについても、社会資源が不足していたり、その機能が十分発揮できていないことも明らかになっています。これらの状況を受けて、本会では、7項目にわたる提言を取りまとめています。
1 地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)の契約待機者の解消や対象者の拡充、全市町村社会福祉協議会での事業実施に向けて、国・県・市町村による更なる財政的支援を求めます。
2 市町村において権利擁護担当の専門部署(係)の設置を求めます。特に高齢者や障害者への虐待対応の強化や市町村事業である成年後見制度利用支援事業の積極的活用を求めます。
3 高齢者虐待については、市町村を中心とした虐待防止ネットワークを早急に作る必要があります。
4 障害者に対する虐待に関し、必要な措置を定めた法を早急に国に
おいて整備する必要がありますが、先行して市町村において障害者虐待防止の取り組みを行う必要があります。
5 市町村社会福祉協議会は、地域住民の権利擁護について、行政や住民、関係機関と協働して地域課題に向き合い解決のためのコミュニティソーシャルワークに取り組む必要があります。
6 関係機関が地域ごとに「トータルな権利擁護システム」を作る必要があります。その際、市町村社会福祉協議会は市町村とともに、権利擁護の中核的な推進主体として、先駆的・開拓的に取り組む必要があります。
7 地域福祉計画などの市町村や県の各種行政計画および市町村社会福祉協議会における地域福祉活動計画において、地域住民の権利擁護について取り組むべき具体的な施策について盛り込む必要があります。
今後、社会福祉協議会として取り組むべき権利擁護システムとしては、(1)成年後見制度(2)高齢者・障害者虐待防止(3)社会福祉協議会独自の緊急金銭管理支援の3項目を具体的にあげています。
(1)成年後見制度
成年後見制度は、認知症や知的、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方を法律的に保護したり、支援をしていく制度ですが、制度利用の周知や活用が十分でない現状があります。
社会福祉協議会としては、今後、成年後見制度の地域住民への周知や啓発などを行い、制度利用が必要な方を適切な窓口へつなぐなどの対応が必要になっています。また、第三者後見人が不足している現状から弁護士や司法書士、社会福祉士、精神保健福祉士、市町村などと協力しながらその確保に努めたり、場合によって社会福祉協議会自らが法人として後見を受任する事も想定されます。高齢化社会や障害者の地域生活移行が進む中、地域で生活する高齢者や障害者等の権利擁護を進めていくためには、更に成年後見制度の積極的な活用が求められており、市町村による主体的な施策の推進や市民などとの協力などにより、制度を充実させていく必要があります。
(2)高齢者・障害者虐待防止
県内では、高齢者・障害者への悪徳業者による詐欺や親族からの金銭搾取、身体的虐待などが発生している事が報告されています。平成18年に高齢者虐待防止法が施行され高齢者虐待発生時の通報体制や施設への入所措置などの対応策等が具体的に定められました。今後、高齢者虐待防止や発生後の対応については、各機関が個々に対応するのではなく、連携を図りチームで取り組んでいく事が求められています。
社会福祉協議会としても、その特性や強みを活かし、各市町村の地域包括支援センターやケアマネジャー、民生委員や地域住民、警察などと連携し、高齢者虐待の早期発見と防止に更に取り組んでいく必要があります。
障害者虐待防止については、国の法整備が未だ整えられていませんが、個々の事例において、市町村をはじめ関係する機関が連携をとり、先行して具体的な対応を行っていく必要があります。
(3)社会福祉協議会独自の緊急金銭管理支援
地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)の利用ができない場合や成年後見制度の利用が必要ながら第三者後見人が見つからない場合など、権利擁護に関する何らかの支援を受けないと地域で暮らす事が出来ない事例が現在多く見られています。
制度の狭間で権利擁護に関する支援が行えていない事例については、行政による措置など適切な介入と支援を必要としています。老人福祉法第10条の3や障害者自立支援法第2条、高齢者虐待防止法第3条等には、高齢者や障害者が地域で安心して暮らせるように適切な支援や権利擁護のための必要な施策などを市町村が行うことが規定されています。社会福祉協議会においても、市町村と連携を図り、地域住民の権利擁護をトータルに支える仕組みづくりに協力して取り組むことが必要です。
社会福祉協議会では、福祉活動専門員やコニュニティソーシャルワーカーを中心に、新しい社会資源の創出や地域住民を主体とした見守りネットワークなどを構築していくことが求められています。社会福祉協議会独自の緊急金銭管理支援の仕組みも、その取り組みの一つとして各地域で創り上げていく必要もあります。
これからの社会福祉協議会は、権利擁護の中核的な推進主体として市町村とともに、先駆的・開拓的に地域住民の権利擁護に関する諸課題に取り組んでいく使命があるといえます。
地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)に関するお問い合わせ先
※平成20年4月1日より事業実施窓口(基幹的社会福祉協議会)を増設しています。
沖縄県福祉サービス利用支援センター(事業全般に関するお問合せ)
(沖縄県社会福祉協議会内)
(管轄市町村 久米島町、渡嘉敷村、座間味村、粟国村、渡名喜村、南大東村、北大東村)
TEL098-887-2028 FAX098-887-2068 |
北部地域福祉権利擁護センターがじゅまる (名護市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 名護市・国頭村・大宜味村、東村、今帰仁村、本部町、恩納村、宜野座村、
金武町、伊江村、伊是名村、伊平屋村)
TEL0980-54-6565 FAX0980-53-6042 |
中部地域福祉権利擁護センターくくる (沖縄市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 沖縄市、うるま市、読谷村、嘉手納町、北谷町)
TEL098-933-5005 FAX098-933-1919 |
中部地域福祉権利擁護センターりんどう (浦添市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 浦添市、宜野湾市、西原町、北中城村、中城村)
TEL098-879-8358 FAX098-875-1613 |
南部地域福祉権利擁護センター (那覇市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 那覇市、南城市、南風原町、与那原町)
TEL098-857-4525 FAX098-857-6052 |
豊見城地域福祉権利擁護センター (豊見城市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 豊見城市、糸満市、八重瀬町)
TEL098-856-2782 FAX098-856-2774 |
宮古地域福祉権利擁護センター (宮古島市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 宮古島市、多良間村)
TEL0980-75-3955 FAX0980-75-3955 |
八重山地域福祉権利擁護センター (石垣市社会福祉協議会内)
(管轄市町村 石垣市、竹富町、与那国町)
TEL0980-84-2525 FAX0980-84-1199 |
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福祉情報おきなわVol.120(2008.7.1) |
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