特集 「赤い羽根」のこれまでとこれから~共同募金運動60年~

 
 「赤い羽根」をシンボルとして全国各地で展開されている共同募金運動が創設されて、今年は60年の節目の年を迎える。毎年実施される運動期間中には多くの善意が寄せられ、国民全体によるたすけあい運動が展開されてきた。本号では共同募金運動のこれまでを振り返り、そしてこれからの社会的な役割・意義について考えていきたい。


共同募金のあゆみ
▲運動開始初期のポスター
 共同募金運動は終戦の痛み覚めやらぬ昭和22年にスタートした。当時は敗戦により国全体が貧困の状況下にあり、多くの民間の社会事業施設も大打撃を被った。そこで、政府はアメリカのコミュニティチェスト運動をヒントに、民間社会事業の救済復興に向けた資金援助のため募金運動の実施を決定した。これが、共同募金運動の始まりである。シンボルとなった赤い羽根は翌年から採用されている。

▲沖縄では住民のみならず米軍関係者へも協力を積極的に呼びかけた。
 沖縄県では米国統治という特殊な状況下で、本土から遅れること5年の昭和27年に共同募金運動が開始された。当初は沖縄群島社会福祉協議会(沖社協=現在の沖縄県社協)の一事業としてのスタートだった。沖縄の復興と生活に直結する福祉課題の改善にむけ、沖社協には大きな期待が寄せられていた。沖社協では福祉事業の活動資金の確保に向け共同募金運動を開始したが、募金活動に対する県民の理解は乏しく、また経済的貧困が蔓延していた時代でもあったため、開始当初は困難を極めた。最初の年は216万6768円(B円)と、目標額の300万円を大きく下回る結果となった。その後、米軍施設関係者による協力や本土在住の県出身者などへの援助要請など精力的な運動が功を奏し、共同募金運動の基盤が徐々に整備されていった。

 昭和47年に本土復帰を迎え、本土の法制度が適用されることを受け、沖縄県共同募金会が設立された。これまで沖社協の一事業として実施されてきた共同募金運動は共同募金会に引き継がれ、現在の組織体制となった。以来、赤い羽根共同募金は広く県民に浸透し、今日では地域福祉推進の一翼を担っている。


善意のシンボル 赤い羽根
▲寄付する側、寄付を募集する側双方が参加できるのが「赤い羽根」の特長である。
 「赤い羽根 共同募金運動」は、10月1日から12月31日までを期間として全国一斉に実施される。実施主体は都道府県に設置される共同募金会で、活動組織として各市町村に支会・分会が設置されている。期間中は、街頭募金や個別募金、職域募金などを通じて県民総ぐるみで募金運動が展開されている。「地域の福祉、みんなで参加」というスローガンのとおり、寄付をする側、寄付を募集する側の双方が参加できるため、ボランティア参加の機会としても定着している。ちなみに、沖縄県では平成17年度の運動期間中、2億0892万6494円の善意が寄せられている。


募金の使いみち
 赤い羽根共同募金の期間中に寄せられた募金は、その翌年度に各団体に配分され、福祉事業に役立てられる。沖縄県における昨年度の募金の実績額は、2億7百万円余りとなっている。そのうち、市町村社協に対して1億2千2百万円余りが配分されるほか、県共同募金会を通じて3千2百万円余りが県内の福祉施設団体に配分される。残る5千4百万円余りは災害時に備えた積立金や次年度の運動資金などにあてられる。

 市町村社協への配分金は、社協の貴重な活動資金となっている。それぞれの地域の福祉課題に柔軟に対応すべく、地域の特色を生かした多彩な事業メニューが組まれており、ボランティア活動の振興や高齢者、障害者の社会参加の促進にも役立てられている。

 一方、県共同募金会を通じて行われる福祉施設団体への配分では、広域に事業を展開する福祉施設団体やNPO法人、当事者団体などの活動資金として役立てられている。

 なお、こうした配分の決定に際しては、地域の代表者で組織される配分委員会が申請のあった事業の内容、使途金額等について審査し、承認を行っている。


今日的なニーズへの対応
 終戦復興期の共同募金創設から半世紀以上が経過し、社会情勢も大きく様変わりつつある。

 民間社会福祉施設整備が充実した一方で、社会福祉制度では十分にカバーできない福祉ニーズも多く発生している。こうした中、制度の間を埋めるボランティアやNPOの活動も活発化してきており、こうした「共助」の活動の輪はさらに広がりを見せるものと思われる。

 また、地震や水害などの災害時には被災地支援に向けた早急な取り組みが求められる、物資や義援金の受け付けや配分などを効果的に行う窓口も必要となってくる。

 こうした情勢を踏まえ、共同募金会には今後ますます大きな役割が期待されている。これらの期待に応えるべく、共同募金会では先駆的な活動やNPO、ボランティアグループ、当事者団体などへ支援にも力を入れている。また、全国的なネットワークを生かして、「赤い羽根」とは別に、災害時の緊急的な被災地支援に対応するため、義援金の受け付けや配分なども行っている。

平成17年度共同募金 募金方法別内訳
沖縄 全国
戸別募金 35.2 73.7
街頭募金 3.0 2.4
法人募金 26.1 13.2
学校募金 4.7 2.0
職域募金 16.7 4.2
イベント募金 2.2 0.5
その他の募金 12.0 4.2
※数字は構成比(%)



インタビュー
 沖縄県共同募金会 運天先英常務理事に、沖縄県の共同募金の特長および今後の共同募金運動の展開について話をうかがった。

沖縄県における共同募金の特長とは?
 赤い羽根共同募金の実績を募金方法別で見てみると、沖縄県は法人募金や職域募金の割合が高く、戸別募金の割合が低くなっています。これは、大きい小さいに関わらず多くの企業が募金に協力してくれているからです。ただし、景況に左右されやすいのも事実で、昨今では協力企業が増えても募金総額が落ち込んでしまっています。
 また、各家庭にお願いする戸別募金についても多くの皆さんにご協力いただいていますが、法人募金の額が大きいために相対的に割合が低くなっています。ただ、自治会の加入率が低下するなど、今後の動向も気になるところです。

現在、課題となっている点は?
 全国的に言えることですが、不況の影響によって募金が集まりにくい情勢となる一方で、募金の需要はどんどん増えてきています。そのため、配分を希望する全ての団体に配分できない状況があります。

今後の募金運動の展望は?
 近年、小規模作業所などは運営がとても厳しくなっています。こうした団体からの需要はますます増えてくるものと思われます。
 一方、中央共同募金会では、共同募金改革について議論を始めています。沖縄県でも全国各地の共同募金会と共に今後の募金運動の強化に取り組んでいきます。




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福祉情報おきなわVol.109(2006.9.1)
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