特集 グループホーム外部評価のススメ

 平成14年度から認知症高齢者グループホーム外部評価事業(以下、外部評価)が実施されている。沖縄県社協では本年度10月より外部評価の評価機関としての指定を受け、県内の認知症高齢者グループホームに対し、外部評価を実施することとなった。
 今回は本県における外部評価事業の特色と意義について紹介する。


なぜ外部評価が必要か
 認知症高齢者グループホーム(以下、グループホーム)は現在、全国で約7千ヶ所余、県内では29ヶ所が設置されている(05年10月現在)。認知症やさまざまな生活困難を抱えた高齢者の生活の場としてグループホームに大きな期待が寄せられる中、事業所には、利用者やその家族が安心できる「質の高いケア」が求められるのはいうまでもない。
 そんな中、国はグループホームに対し、第三者による外部評価を平成14年度から義務付けた。外部評価はグループホーム事業者に目指すべき姿を示し、対外的に事業者情報を開示することで社会的信頼と安心を確保するねらいがある。




(写真 安心できる質の高いケアの実現のために外部評価が導入されました。・写真はイメージ)



本県における外部評価導入の経緯
 他の社会福祉施設の先鞭をきってグループホームに外部評価が導入されたのは、義務付けが開始される以前から全国各地の事業者同士が協力し合いながら互いの評価活動を自主的に進めてきた経緯がある。
 平成14年の外部評価導入にあたって、本県では「高齢者認知症介護研究・研修東京センター」が県の業務依頼を受けて評価業務をスタートさせた。その際、沖縄県社協が「協力機関」として介在し、地元グループホームおよび評価調査員と評価日程等の連絡調整を行った。また、県内のグループホーム事業者が加入する「沖縄県グループホーム連絡会」とも連携し、外部評価についての情報交換などを行ってきた。さらに、円滑な外部評価を推進するために事業者や一般県民などを対象にした広報啓発セミナーや、外部評価の前提となる自己評価の取り組みのための事業者研修会などを開催してきた。
 こうした経緯を踏まえ、沖縄県社協では今年10月に県より「評価機関」の指定を受け、これまで協力機関として培ってきたノウハウを活かしながら、外部評価事業のさらなる充実強化に努めていくこととなった。

外部評価の実際
 外部評価は、県の指定を受けた評価機関(沖縄県社協)とグループホーム事業者が契約し、実施するもので、調査段階は「書面調査」、「訪問調査」に分けられる。書面調査では事業者による「自己評価」や「家族アンケート」などが行われ、それをもとに、調査員2名による訪問調査が実施される。調査員は介護の専門性等を踏まえ、外部評価に必要な研修を修了した者が評価機関に登録されている。調査員には事業者に関する情報や個人情報について守秘義務が課せられている。訪問調査では、書面調査との照合やスタッフや利用者からの聴き取りなどが行われる。
 調査実施後、調査結果は評価機関へ提出され、その内容について精査された後、事業所に調査結果が報告される。評価結果に異議がある場合は、必要に応じて評価審査委員会や再調査が開かれることもある。
 審査結果が確定すると、その内容が福祉保健医療情報ネットワーク(通称WAMNET(ワムネット))にて公開される。その内容はホームページで誰でも閲覧することができるしくみとなっている。すでに県内23ヶ所の事業所の評価結果が公開されている。
 おおまかには以上のような流れで外部評価は実施される。また、継続的な業務改善体制に資するため、事業者はこの外部評価を毎年受審することが義務づけられている。なお、受審にかかる手数料は1ユニット15万円(税込)となっている。






外部評価導入の効果と実践-グループホーム寿
 糸満市にあるグループホーム寿(保良康弘 所長)では、平成14年に県内で初めて外部評価事業を受審した。外部評価の実施にあたり、保良所長はまず、事業所による自己評価票を職員全員に配布し、職場全体でケアの現状を検証していった。「自己評価を話し合う中で、サービスの達成度や課題について情報を共有することができた。職員の声を聴く良い機会となった。」と話すように職員の意識変革にも効果が生まれているという。また、外部評価では、「調査員と改善策について話し合うことで、事業所全体で具体的な改善目標を立てて取り組むことができた」という。さらに、家族アンケートも「家族の意見を聴く貴重な機会となった」と振り返る。
 このように、実践をとおして、多くの効果を実感してきたという保良所長は、今後の外部評価事業の展開について「これからは、調査員と事業所が信頼し合える関係をさらに強めていくことが必要。かつ、評価する側として必要なことをきちんと助言してもらい、グループホームの質をともに高めていく関係を築いていきたい」と語った。
 外部評価を前向きに受け入れ、サービスの現状の把握と、改善の契機として生かす姿勢がとても印象的だった。

(写真 グループホーム寿の保良所長(中央))


外部評価のススメ
 グループホームは、従来の大規模大人数の処遇によるケアと違い、家庭的な雰囲気の中でその人の自立生活を支える受け皿として期待されている。一方で、その性質上、「密室化」、「孤立化」といったややもすると外部から閉ざされた存在に陥りやすい点が懸念されてきた。しかし、志高い経営理念を掲げ、日々「質の高いケア」に取り組む事業者も多い。
 外部評価事業の導入はこうしたグループホームのケアサービスの水準を客観的に検証していく手段である。提供するサービスに誇りと問題意識を持っている事業者にとっては大きな力となり、福祉理念に反するケアを行う事業者には、社会の厳しい目を向けるきっかけとなる。
 外部評価事業は1回の調査で完璧なグループホームを築く魔法の手立てではなく、評価と改善活動を何度も繰り返しながら事業者や職員を育て、地域社会との関係を構築していく営みそのものである。
 グループホーム外部評価事業を実施する沖縄県社協では、利用者とその家族、事業者が協力し合って安心のケアを実現できる応援団として機能していきたいと考えている。


グループホーム外部評価事業に関するお問合せは―
 沖縄県社協施設団体福祉部まで
 WAMNET(ワムネット)のホームページアドレスは、http://www.wam.go.jp/




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福祉情報おきなわVol.105(2006.1.5)
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