特集 福祉サービスの苦情解決 福祉サービス運営適正化委員会
福祉サービスを安心して利用できるようにするため、施設や事業所は利用者からの意見・要望・苦情の適切な解決に努めることとされています。また、社会福祉法にも基づき、沖縄県社会福祉協議会の中に、「沖縄県福祉サービス運営適正化委員会」(以下、運適)を設置し、中立・公正な立場で福祉サービスの苦情解決事業を行っています。制度発足から9年目を迎える、本事業を紹介します。
福祉サービスの苦情解決とは
福祉サービスは、そのサービスの利用者と提供する事業者の契約に基づいて行われます。社会福祉法の基本理念である「個人の尊厳」の実現のためには、利用者保護の仕組みを整える必要があることから、「福祉サービスの苦情解決」が位置づけられました。
福祉サービス事業者は常に、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないものとされ、苦情解決を通して、サービスの改善や職員の資質向上、利用者の顧客満足を目指すことを目的としています。
事業所段階での苦情解決
福祉サービスの苦情解決は、第一義的には、提供される事業所段階での解決を目指すものです。そのために、苦情解決責任者、苦情受付担当者、第三者委員を選任し、「苦情解決要綱」といった一定のルールに基づいて対処する仕組みとなっています。
運適が、今年7月に県内の福祉施設や事業所、社協を対象に実施したアンケート(有効回答数535)によると、苦情解決責任者の設置率は、96.8%、苦情受付担当者97.4%となっています。また、第三者委員の選任率は83.7%、苦情解決規程等の整備率は81.7%です。これらは昨年度の数値と比較していずれも高くなっています。
今後は、第三者委員の選任率と規程等の整備率の向上を図ることが課題となっています。ちなみに、平成19年度に事業所段階で受け付けた苦情件数は1,285件(昨年比18件増)となっています(下枠内参照)。
アンケート結果ダイジェスト
○苦情解決責任者の設置率
96.8%(前年比1.8ポイント増)
○苦情受付担当者の設置率
97.4%(同0.8ポイント増)
○第三者委員の選任率
83.7%(同2.0ポイント増)
○苦情解決に関する規程等の整備率
81.7%(同1.8ポイント増)
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○第三者委員の設置形態
「法人単位で設置」54.2%で最多
○第三者委員の活動状況
「定期的な聞き取り」31.9%で低調
○1年間の苦情受付件数合計
1,285件(前年比18件増)
「実績あり」45.8%
○苦情内容別の内訳
「職員の言動・態度」19.1%で最多
「施設等の整備」12.9% |
運適では各事業所での苦情解決を促進するための事業(支援)を実施しています。(下段枠内参照)

運適では苦情解決の推進に向け、様々な支援を行っています。
◎ポスターの配布
事業所に掲示する苦情解決ポスターを無料で配布しています。苦情解決責任者等の氏名を記載することができます。ご用命の際は、事務局までお問合せください。
◎研修会等の開催
苦情解決の意義や対応のポイントを学ぶ「苦情解決セミナー」等の研修会を毎年、開催しています。また、事業所等からの要請に応じ、運適の職員による出前講座を実施しています。出前講座については、事務局までお問合せください。
◎巡回訪問の実施
苦情解決の仕組みの整備や運営状況の確認と、情報提供を目的に、県内の福祉施設・事業所を対象に、巡回訪問を実施しています。

福祉サービスに関する意見・要望、苦情は、まずは、各福祉施設・事業所の苦情受付窓口または、第三者委員へご相談ください。
運営適正化委員会の窓口開設時間は、月~金曜(年末年始、祝祭日、慰霊の日等をのぞく)午前9時から午後5時までとなっています。 電話098(882)5704。
運営適正化委員会
当事者同士による解決が困難な場合や、直接、事業所に申し出しにくい場合等に苦情相談を受け付ける機関として、各都道府県社協内に「運営適正化委員会」が設置されています。
運適では、弁護士や医師、学識経験者等で構成される8名の委員が苦情解決への対応を行っています。相談は来所、電話、FAXや電子メール等で受け付けています。相談に関する秘密は厳守されるほか、匿名による相談にも対応しています。ただし、事情調査など、事実確認を要する場合は、匿名での対応が困難になることがあります。
運適が対象とする福祉サービスは第1種・第2種社会福祉事業を中心とするものです。対象外の相談や内容によっては、他の専門相談を紹介することがあります。また、虐待等のおそれがある場合は、速やかに県知事に通知することになっています。
運適による苦情・相談の受付
運適が発足した平成12年度から平成20年度上半期までの苦情の受付件数は延べ342件で、苦情に至らない「その他の相談」は延べ752件となっています。
年度別の推移を見てみると、苦情件数は、平成19年度に初めてマイナスに転じましたが、その他の相談件数が大幅な増加傾向にあります。(棒グラフ参照)。要因としては、各事業所段階での苦情解決体制が整備されてきたこと、一方で、福祉制度等に関する相談ニーズが増加してきたことが想定されます。
分野別で見てみると、「高齢者分野」が36.0%で最も多く、続いて「障害」26.8%、「児童」12.3%となっています。
「苦情」のイメージを新しく
意見・要望も苦情も、利用者が事業者に対して、対応を希望して発した言葉であることに違いはありません。苦情があがるということは、裏を返せば、事業者に期待や信頼を寄せている証拠でもあります。苦情に対してプラスイメージをもつことが大切です。よく、「うちの施設では苦情は1件もありません」という言葉を耳にしますが、利用者が要望や苦情等を言い出しにくい環境にあったり、苦情等に積極的に耳を傾けていなかったりすることも想定されます。「苦情は利用者の声」ですから、苦情をゼロにすることが目的ではなく、寄せられた苦情等に迅速・丁寧に対応し、不満を残さないようにすることが大切です。
(運営適正化委員会のホームページ)
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福祉情報おきなわVol.123(2009.1.1) |
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