住民みんなで作り上げる地域交流の場
ゆいまーる共生事業・喜名福寿会(読谷村喜名)

 
 読谷村は本島中西部に位置する人口およそ3万8千人の村で、住民相互の結びつきが強く、村全体として地域活動が盛んな地域である。
 同村を縦断する国道58号線の沿線に広がる喜名地区では、住民のボランティアが運営するミニデイサービス(ゆいまーる共生事業)が行われ、地域交流の場として福祉の向上に一役かっている。



大勢の住民ボランティアが役割を分担して運営

▲手作りのおやつに舌鼓を打つ利用者。
▲手作りのおやつに舌鼓を打つ利用者。
 読谷村喜名地区の公民館では毎月第2・第4水曜日の午後2時から4時の時間帯に、地域の高齢者を対象としたミニデイサービスが開催されている。このミニデイサービスを運営するのは、地域のボランティアグループ「喜名福寿会」(宇根清子会長)のメンバーの皆さんである。
 喜名福寿会の最大の特徴は、地域住民がボランティアとして多く関わっている点である。毎月2回のミニデイサービス(定例会)には利用対象者約35名(登録は約50名)に対し、ボランティアも約36名が参加している。これら大勢のボランティアが、皆それぞれに役割分担をし、手分けしながら準備を行っている。
 まず、定例会前日の役員会で、プログラムやおやつのメニューの検討を行う。そして、定例会当日になると、午前中からボランティアが公民館に集い、会場設営やおやつの調理、レクリエーションの用意などを行っている。会場は利用者がリラックスして過ごせるよう至るところに細かい気配りが施され、明るい雰囲気を作り上げている。
 取材に訪れた日は、開始前に健康チェック(血圧測定)が行われ、健康体操、地域の小学校との交流、レクリエーション、おやつを食べながらの歓談、誕生会などが行われた。
 喜名福寿会のメンバーの年齢層は幅広く、利用対象者と同年代のボランティアも多い。地域に住む住民同士が公民館を拠点に交流し、一緒に楽しい時間を過ごしている。
 また、定例会のほかにも年間を通じて屋外活動なども実施され、活動内容も充実している。

公民館を活用したミニデイの草分け 県内各地に波及
 
 活動のスタートは、平成元年にまでさかのぼる。当時の村社協事務局長の呼びかけで、地域の民生委員らが「水曜会」を結成し、毎週水曜日に地域の高齢者を招いてのレクリエーションを中心とした活動を始めたのが最初である。
 平成2年には「喜名福寿会」に改称し、役員体制などを確立。徐々に参加者も増え、月2回の開催となった。やがて自治会の協力を得て、公民館で手作りのおやつを調理・提供するなど、活動内容も充実していった。現在ではすっかり地域に定着した活動となり、住民は開催日をいつも心待ちにしているとのことである。
 こうした喜名地区の取り組みをモデルに、公民館を活用したミニデイサービスが村内各地に広がっていった。現在では読谷村の「ゆいまーる共生事業」として全23字で開催されている。公民館型のミニデイサービスはやがて県内各地にも波及していくなど、まさに草分け的な取り組みであった。
   

地域ぐるみで活動をバックアップ 世代間交流も活発に
  
 喜名地区は、昔から住民相互の結びつきが強く、地域活動が盛んであった。自治会には年代別に子ども会、青年会、婦人会、成人会、協友会、老人クラブといった団体が結成され、それぞれが活発な活動している。喜名福寿会もこれらの団体の一つとして自治会から認められ活動を行っている。公民館施設の使用や活動資金の助成など自治会のバックアップは大きな支えとなっている。
 ボランティアを含めると子どもからお年寄りまでさまざまな年代の住民が関わっている喜名福寿会では、保育園や小学校、子ども会、老人クラブなどとも積極的に交流を行っている。取材に訪れた日は地元の小学生が高齢者の前で三線を披露して場を盛り上げていた。
 学校や行政を含め、地域ぐるみで活動を支えていることが喜名福寿会の強みとなっている。


いくつになっても現役のボランティア

▲ボランティアも利用者と一緒になって場を楽しむ。いくつになっても現役のボランティア。
▲ボランティアも利用者と一緒になって場を楽しむ。いくつになっても現役のボランティア。
 喜名福寿会の松田千代子副会長は「ボランティアを始めて10年になるが、辞めようという気に全くなりません。この活動には何かひきつけて離さない魅力があります。」と話す。
 定例会の運営にボランティアとして関わっている知念政仁さん(86歳)は、「自分と同い年の対象者もいるが、私は会場準備の手伝いをしています。皆さん手分けしながらだから、大変じゃない。」と語る。年齢を感じさせない力強い言葉からは大きなやりがいを感じている様子が伝わってくる。こうして、いくつになっても現役のボランティアでいることが、生きがいづくり、健康づくりにもつながっている。


男性の参加者を増やし、利用者の裾野の拡大を
 
 活動上の課題点について宇根会長に話をうかがうと「男性の参加者が少ないこと」を第一に指摘した。女性の参加者が増える一方で、参加の案内や呼びかけを行っているものの、男性の参加者がなかなか集まらない現状がある。役員会では、男性の参加者に役割を与えて、会の運営に関わっていることを実感してもらうなどして参加を喚起し、利用者の裾野を広げていきたいと考えている。 


脈々と受け継がれる「支え合いの心」
 
 平成元年から20年近く活動を継続できているのは、地域ぐるみで取り組んできたからに他ならない。そして、これからも「みんなで支え合う」というスタンスに変わりはない。
 宇根会長は「『いつかは自分もお世話になるときが来るから』って冗談で言うけども、本心はいつまでも元気でボランティアを続けていきたい。」と語る。その言葉からは、支える側、支えられる側という垣根を越えてみんなで作り上げようという気概が伝わってくる。
 今後も、喜名福寿会の活動が地域から必要とされている限り、「支え合いの心」は次の年代へと脈々と受け継がれていくものと思われる。



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