社会福祉法人のチャレンジ ~新たな社会福祉法人像の構築~

『社会福祉法人名護学院』

 「私たちも働きたい!」。障害があっても自立した生活が送れるよう、地域での就業支援に力を注いでいる社会福祉法人名護学院。その取り組みに挑戦し続けるのは中心人物でもある理事長の崎浜秀政氏。今回の社会福祉法人のチャレンジでは、崎浜秀政氏へのインタビューをもとに名護学院のチャレンジを紹介します。

1.法人・施設の概要
  法人名・代表者  社会福祉法人名護学院・理事長 崎濱 秀政
  事業所名・所長  ティーダ&チムチム・所長 崎濱 秀政
  住 所 〒905-0006 名護市字宇茂佐943番地 TEL 0980-54-8181、8182

2.地域貢献実践の概要
  事業名 障害者就業・生活支援センター事業
  事業内容 北部地区において、雇用、福祉、教育等の関係機関と提携しながら
  障害児・者の就労と暮らしの相談・支援を行う。
  財 源 委託事業費
  開始年月日 平成13年4月1日

ティーダ&チムチムの外観


3.実践に至った経緯と現状、課題
▲中部食肉センターでの仕事
 名護学院が障害者の就労支援に取り組むことになったのは、昭和63年に知的障害者更生施設に入所するAさんの希望を叶えたことに端を発します。「働きたい」と希望する糸満市出身の施設利用者の願いに何とか応えられないかと、地域での職場開拓を始め、ジョブコーチ制度もない時代でしたが、職場実習をさせてもらう機会を何とか得ることができ、就職に結びつけた事例がありました。この1つの実践は、職員の励みになったと同時に、利用者にとっても「私も働きたい」という気持ちを後押しするモデルになったものです。

 利用者の職場実習を積極的に進めていく中で、平成3年に知的障害者のグループホームを始めました(現在は9ヶ所)。グループホームを2つ3つと作り、利用者の地域生活への移行を支援していくうちに、施設の措置から離れた彼らの地域生活を支える新たな仕組みが必要ではないかという思いが強くなってきました。そこで、平成10年より施設から地域移行した人の相談にのるワーカーを2名配置した社会参加支援センターという独自の事業を法人内に設けました。

 国の障害者福祉施策に利用者の地域生活への移行が打ち出され、法人としては既に社会参加支援センターのワーカーが地域とのつながりを築き始めていた頃、偶然、障害者就業・生活支援センター事業の情報を得ました。「この事業を受ける事で、地域で支える仕組みが出来る」と確信し、平成13年4月、北部地域人口12万人のエリアで障害者就業・生活センター事業を受託したのです。

 障害者の就労支援において必要な事は、企業の理解を得ることと企業を知ることです。職場開拓する際は、必ず工場の生産課程を全部見せてもらい、アセスメントを行います。そして、この部分の仕事だったら、この人でも出来るという作業を探すのです。全部の仕事は出来なくても、ある特定の部分の仕事については他の人と同じ又はそれ以上出来るという一つの専門を作り、その人の職域を少しずつ広げて行くという方法により就職につなげやすくなります。また、職場の従業員にその人に対するコミュニケーションの取り方や障害の特性を正しく伝えて、理解してもらうことにより、就職先への橋渡しを行います。

 施設が障害者の就労支援を通して地域社会と関わり始めてから、障害者の生活を支えるのは、我々だけではないと気づき始めました。施設職員が使命感に燃え、障害者の生活全てを支えるのだという気負いで、望まれる以上の支援を行い、多くを抱え込んでしまっている部分があったと思います。しかし、地域には、学校や警察、郵便局や銀行、民生委員など色々な専門家がいますから、その人たちを巻き込み、支える人と人をつなげていけば、地域で支える仕組みが出来てくるのかなと、何となく分かってきました。

4.今後の展望
 企業は、利益を追求する一方で、地域貢献にも取り組み始めています。社会福祉法人は企業の進める地域貢献と協働しながら、共に支え合う地域を創っていければいいのではないでしょうか。
 そして、法人としても施設利用者の地域生活移行を目指すと同時に、施設の地域移行も進めていきます。施設が地域に出て行くということは、地域の様々な専門家に出会い、支援の輪を広げていくと同時に、地域から必要とされるような施設づくりもしなくてはならなりません。私たちは障害者福祉の専門家であるという自信を持ちながら、地域と付き合う事で「あんた達、もっと、こういうこともしてよ!」と言われるような関係を築いていきたいと思います。

5.今回のチャレンジに思う
 名護学院は、障害者の生活と就労を両面から支援することを通して、施設の中で自己完結したシステムの限界に気が付きました。社会福祉法人だけではなく、地域住民や学校などの教育機関、医療・保健機関、地元の企業など様々な社会資源のネットワークを構築し、互いの協力のもとに支援していかなければライフステージを通した支援は成り立たないとして、地域の中に様々なつながりを築きつつあります。大規模入所施設を抱える名護学院の「地域移行は、利用者のみならず、施設も共に」という理念とその取組みは、これからの障害者福祉施策を実践するモデル的存在であるといえるのではないでしょうか。


6.次号の紹介
次号では、義務教育を終了した子どもたちの就職・自立していく課程を支える児童自立支援施設「島添ホーム」を運営する社会福祉法人豊友会を紹介します。(5月発行予定)



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福祉情報おきなわVol.94(2004.3.25)
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