県ボラセンPresents
本年度、沖縄県社会福祉協議会が実施している「災害被災者支援力パワーアップ事業」の一環として、去る2007年11月17日(土)、宜野湾市伊佐区にて、地震による津波の避難警報発令から30分以内に伊佐区公民館に避難するという「伊佐区津波避難訓練」が行われました。
訓練は本事業のモデル地区として指定された「宜野湾市社会福祉協議会」と「伊佐区自治会」とともに行われました。伊佐区は、宜野湾市の中で西海岸に面し、市内で一番の低地に位置しています。そのため、津波に対する住民の方々の不安は大きく、「まずは地震による津波からの緊急的な一時避難訓練をやろう」という住民の声がきっかけとなり、実施されました。
(沖縄県社協で取り組んでいる災害関連事業の全体像については、次頁下段(※)を参照)
訓練当日は、久米島沖で地震が発生し、沖縄本島西海岸に津波が押し寄せたという想定で行われました。午前10時に防災無線や自治会の放送で住民に呼びかけ訓練が始まり、約400人の住民が伊佐区公民館に避難しました。
自治会を中心とした地域の方々が避難誘導や公民館内の案内・誘導を行い、宜野湾市は防災無線による避難放送、警察は空巣対策のパトロールや避難誘導、消防は車輌による放送と救護、日赤奉仕団は炊き出しを行うなど災害対策に関わる多様な組織が連携しながら訓練は行われました。
公民館内に避難住民が入りきらず、急遽屋外に集合場所を移動したり、屋外に集まると雨が降ってきたりと想定しなかった事態が発生しましたが、予定通り訓練を行うことができました。
【訓練プログラム】
10:00 避難警報発令
住民は自宅から伊佐区公民館へ避難開始
10:30 避難完了目標
10:50 避難者ふりかえり
11:35 講評(警察・消防・市長
・事業アドバイザー)
11:50 炊き出し昼食
12:30 解散&片付け
▲公民館のホールに避難する住民の様子。その後、入りきらず、屋外へ移動
災害が起こったことで援護を必要とする人、皆が災害時の要援護者となります。
今回は、津波発生からの緊急一時避難訓練ということで、避難場所まで自力では移動できない人、避難に時間のかかる人、津波が起きたという情報を得にくい人(難聴者や外国人など日本語での情報伝達が困難な人)を要援護者と想定しました。
伊佐区には外国人が居住するエリアがあることから、事前に英文での訓練案内ポスターを掲示したり、英語での避難警報を日本語と合わせて放送するなど行いました。また、民生・児童委員さんによる区内高齢者4名の避難行動支援(車イスによる移動)や、公民館での英語及び手話通訳者の手配をするなどしました。英語通訳は地域で英語ができる方にお願いしました。
公民館に避難してきた後には、実際に津波が起きたときのことを考えて不安に思うことや感想などを付箋紙に書き出してもらい、全体で共有したり、警察や消防、宜野湾市長からの講評、事業アドバイザーの桑原英文氏(JPCom代表)からの助言を得るなどして訓練のふりかえりを行いました。
住民の意見の中からは、「本当に津波がきたらパニックにならないか不安。訓練はぜひ必要!」「防災無線が聞こえなかった」「緊張感が足りない」「津波を想定した場合、(海に近い)公民館が避難所というのはおかしいのでは?」など多くの感想が出されました。
参加された方のほとんどは津波に対する不安・危機感を持っており、訓練の必要性は認めながら、まだまだ区民全体としての意識は高めていかねばならない段階であり、避難場所の選定からもっと考えていく必要がある、という認識をお持ちのようでした。
ふりかえり会の後は、日赤奉仕団宜野湾支部の皆さんが準備してくれたカレーの試食が行われました。
大きい具材を飲み込みにくい人のための「具のきざみカレー」や、宗教上の理由などからお肉を食べられない人のための「肉なしカレー」も用意されました。
また、被災地では水は貴重なものとなることから、器を洗わなくても済むように器にサランラップをまいて、その上にご飯とカレーをよそうという工夫もされました。
伊佐区外の自治会や市外から、社会福祉協議会職員やNPOのスタッフなど18名の見学者が訪れ、訓練の様子を見学しました。今後、より効果的な訓練とするために、見学しながら気づいたことやアイデアをだしてもらうなどしました。
いざ津波などの災害が発生した場合、災害の規模が大きくなれば大きくなるほど、行政などの公助の力は分散し弱まり、最も頼りになるのは自らと家族、そして隣近所の人たちの力です。
「自分たちの暮らしと命は自分たちで守る!」という意識と「日頃から、隣近所にはどんな人が暮らしているのかを気にかけ、声を掛け合える関係をつくっておくことが重要なんだ」ということを確認した訓練となりました。
2008年1月26日(土)には、津波から避難し、自宅に戻れず、避難所で生活しなければならなくなった状況を想定した訓練を同地区で行います。
避難所では、プライバシーやトイレ、心のケア、食事など様々な問題が出てきます。そうした問題を避難した被災住民自身で解決していかねばなりません。そこにいる住民が外部の支援の力を最大限に活かしながら合意形成し、問題解決していくプロセスを体験できるような訓練を目指します。
【本年度の災害への取組概要】(※)
近年、台風・豪雨や地震・津波といった災害が日本国内で毎年のように発生し、大きな被害をもたらしています。これらの災害においては、高齢者・障がい者等(要援護者)が避難できず、長期間取り残されたり、亡くなるということが起きています。また、被災者の避難所生活は長期化しており、その長期化する集団生活の中で高齢者や障がい者だけでなく、外国人や乳幼児のいる家族など多様な被災当事者が多くの生活上の困難を抱えるという現実があります。
そこで、沖縄県社会福祉協議会では、今年度、日本郵便(元・日本郵政公社)年賀寄附金助成を受け、「災害被災者支援力パワーアップ事業」に取り組んでいます。本事業では、〝被災当事者の自治力・共助力・合意形成力の向上〟と〝被災者主体の支援〟をテーマに「災害時避難所運営シミュレーション」と「被災者支援ガイド(仮)」の作成を行っています。
「災害時避難所運営シミュレーション」では、宜野湾市の伊佐地区をモデル地区と指定し、「伊佐区自治会」「宜野湾市社会福祉協議会」「沖縄県社会福祉協議会」の三者協働で地震による津波を想定した〝緊急一時避難〟と〝避難所での生活体験〟を行います。
避難の様子(公民館入り口付近)
▲「避難しての感想と不安」を付箋紙に書き出し、班ごとに貼ってもらいました。