ふくらしゃ ~暮らしに福をもたらす人~

県民児協広報情報誌-第20号-

平成19年度 
 県民児協総会並びに市町村民児協会長研究協議会開催される

一斉改選ならびに民生委員制度創設90周年の節目を迎える本年、多様化する福祉ニーズに対応するため県内各地において様々な活動実践が展開されている。
 今回開催した研究協議会では、各市町村民児協会長が一堂に会し、「求められる人づくり、活動づくり」をテーマに3人の実践報告者の方々から、それぞれの地域の活動を報告していただいたので紹介する。

 実践報告者1 : 藏當博文 氏(うるま市第1民児協 会長)               
            「字区域の活動実践について」

 私が担当しているうるま市勝連地区は、人口14,441名、世帯数4,981世帯、本島内に4つの字、離島に3つの計7つの字からなっている。私が会長になった約2年前から字ごとの定例会を開催しており、ちょうど字ごとに学校があるので、民生委員の活動も学校単位で行っている。
 定例会において、民生委員はその活動を行うにあたり「守秘義務」に悩み、一人で解決策を考えており、先輩民生委員もアドバイスができない状況があった。そこで私は、同じ地域で抱えている問題を各委員間で共有する協働体制の構築や委員相互の活発なコミュニケーション、字単位の問題解決能力、ネットワークづくりを行うため、まず私が担当している平安名区において、ミニデイサービス終了後に字の民生委員だけで集まりを持つと地域の問題、活動における悩み等が明らかになった。

実践報告者2 : 眞喜志 康夫 氏(浦添市社協 地域福祉推進課長)           
           「中学校区コミュニティソーシャルワーク事業について」

浦添市では、平成16年度行政がつくる市町村地域福祉計画と社協がつくる地域福祉活動計画を連動させて計画づくりがスタートした。本計画は、①福祉地区の設定、②コミュニティソーシャルワークの展開、③社協との協働による地域福祉の促進を大きな3本柱としている。
 本事業は、地域における生活上の問題を抱えている個人や家族に対し、行政や社協、関係機関等の協力を得ながら、地域住民が中心となって必要な援助や支援について考え、各中学校区において問題を解決していく仕組みづくりを推進するものであり、民生委員児童委員の協力も必要不可欠となっている。
 当初、浦添中学校区に職員を配置し、18年度には市内5地区すべての中学校区に拡大し、①総合相談室の設置・運営、②ボランティア養成講座の開催及び活動の拠点づくり、③健康づくり事業の実施、④福祉教育の推進、⑤地域支援ネットワークづくりを図っている。
総合相談室の運営にあっては、校区内の民生委員児童委員による輪番制で第2木曜日に相談日を設けている。民生委員が本事業に関わることにより、新たな相談ニーズの掘り起こしにつながり、さらに民生委員で対応できないケースは、担当ワーカーと一緒に解決方策を検討し、その後の見守り支援体制の構築を図るなど、徐々にではあるが事業効果が出てきている。
 本事業の実施にあたっては、地域において無理のない活動の仕掛けをどのように行うのか、個人情報の保護と共有についてどのように整理するのか等の大きな課題があるが、今後も引き続き地域住民に社協事業の周知を図りつつ、現在は、担当民生委員や民児協、関係機関等との連携をとりながら、事業展開していきたいと考えている。

 例えば、女性委員は一人で精神障害者世帯への訪問が不安、男性委員は母子家庭への訪問活動に地域からどういう目で見られているか心配等の意見である。そのため、男女ペアの「複数担当制」により活動をしたところ、諸問題についてスムーズに解決できるようになり、委員相互で支えあい、学びあう雰囲気が醸成された。 
 もちろん複数で個人情報を共有するので、守秘義務は必ず守るように指導している。字ごとの定例会や複数担当制にしたことで、メリットはあってもデメリットはないと感じており、民生委員同士の連携が図られ、一人で悩まずに活動に取り組める体制を整え、新任民生委員に対しても負担軽減が図られることにもつながるので、結果として「民生委員を辞めたい」という声が減ったことも事実である。

実践報告者3 : 島袋 富士子 氏(那覇市真和志第5民児協 会長)
           「民生委員活動支援ノートについて」

 那覇市は、平成17年3月「地域福祉計画」を策定し、その重点施策として“支え合いマップづくり”が行われた。このマップづくりを普及させるために考案されたのが「民生委員・児童委員活動支援ノート」である。
 当民児協は、平成14年度に「地域部」を立ち上げ、地域資源を活かした民生委員活動のあり方を探る活動を展開してきたが、18年度より那覇市が進める「支えあいマップ」づくりに関わり、民生委員、地域の様々な協力者(新聞配達員、元看護婦)とともに住宅地図を囲みながら始めた。(図参照)

 民生委員がマップづくりにどう関わるのかというと、一人では難しいので、社協職員や関係者と一緒に地域を歩き、地域に詳しい人や資源を確認し、掘り起こしを行う。ただ、担当地域に集合住宅が多く、マップ作り以前に、どのように住民とコミュニケーションをとるのかという課題もある。
 そこで、那覇市と那覇社協では民生委員活動を円滑に行うために、「民生委員・児童委員活動支援ノート」を考案した。8枚のマップから構成されるノートと、そこで出てきた資源や課題を整理する「ご近所福祉計画」から構成される。
 実際のマップ作りでは、たくさんの情報を1枚のマップに記入するので、後からどんな情報だったか分からなくなる場合がある。そこで、支援ノートには①気になる人②気になる子ども③協力者④情報源とゆんたくマップなど内容別に整理することとした。
 このマップづくりと「活動支援ノート」を作成する過程において、次の3つの効果が期待されている。
 ①住民や地域を深く知る手がかりとして
 ②手助けしてくれる協力者探しとして
 ③気になる人を支援する指針として
 つまり、マップづくりから明らかになった協力者や情報源、ゆんたく場などの地域資源を活用し、気になる人をどう地域で支援できるかを探る手法として考案された。
 平成17年11月に活動支援ノートを作成してからもう1年以上も経つが、地域の姿はどんどん変わっている。気になる方が他市町村へ移り、閉じこもり気味の方が新たに見つかり、協力者のうち1人が都合で引越しし、空き地にアパートが建ったりした。
 最後に、私が活動支援ノートづくりに関わってきて感じたことは、地域を知ることは焦らず、気長に活動していくことであり、地域の人材や資源をどう結んでいくか、どうしたら手をつなげるのかをいつも考えながら取り組んだことである。また、この「活動支援ノート」が民生委員活動の支えになることを期待している。

地域の“気になる人”を☆印をつけ、見守りをしている人を青で示し、定期的に訪問して情報を得ている。
 逆に、なにも線が結ばれていな人が地域から孤立している人になるので、こうした人達を地域とどのように繋いでいくのか、一つひとつ取り組むことが“災害時一人も見逃さない”という運動にも繋がっていくものと感じている。
 私には、活動を行うにあたり地域に3人の協力者がいるが、こうした協力者の中から民生委員の後継者も生まれる。マップをつくることで、頭の中にあった情報が目に見える形で整理され、これまで漠然としていた近所同士の関係(生活の営み)がはっきり見えるようになった。


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福祉情報おきなわVol.114(2007.7.1)
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